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ロボットの可搬重量 意外と知らないシリーズ

ロボットの可搬重量 意外と知らないシリーズ | 技術解説

こんにちは。常盤産業のブログ担当 田中です。

人間ってどのくらい重たいものを持ち上げられるのでしょう?もちろん、どういう形状のものをどういう姿勢で、どの位置から、といった条件によって大きく変わってきますが、一つの例として、男子ベンチプレス(フルギア)の世界記録を確認してみましょう。

何kgくらいだと思いますか?

なんと、2021年にアメリカのJimmy Kolbさんが記録した508kgが現時点(2024年4月)で世界記録!

500kgというと、大きめの競走馬、一般的なホッキョクグマなどの大きさです。人間ってそんなに重たいものを持ち上げられるんですね…!

とはいえ、Jimmy Kolbさんは特別な訓練を受けた特別な方です。一般的な人のベンチプレス記録は男性の平均で約40kg、女性の平均で20kg程度だそうなので、「よし、Jimmy Kolbさんの記録に挑戦だ!」といきなり500kg超の世界に挑むのはおやめくださいね。

さて、人間にも持てる重さがある程度決まっているように、ロボットも持てる重さが決まっています。人間にも数kgを持ち上げるのがやっとの人もいれば500kgを持ち上げられる人もいるように、ロボットもその種類によって1kg以下しか搬送できないものも、1トン以上のものでも搬送できる種類もあります。

この持てる重さのことを可搬重量、とかペイロード、と言いますよ。

では、3kgのものをロボットに運ばせたい場合は可搬重量が3kgのロボットを選べばよいのでしょうか。実はそれでは足りません。というのも、ロボットにものを持たせる為には、「ハンド」と呼ばれる部品を取り付ける必要があるから。
ハンドは人間の腕で例えると手首から先の「」の部分。2本指や3本指でつかむハンドやエアーで吸着するもの、加工をしやすいように工具がついているものなど、様々なハンドがあります。どのようなハンドをロボットに付けるか、は目的次第であり、同じロボットを使っていてもどのハンドを使うかはケースによります

ロボットの可搬重量はハンドの重さが考慮されていません。可搬重量が3kgのロボットで搬送できるのは、対象物とハンドの重さを合わせて3kg未満のもの、となります。3kgのものを1kgのハンドを使って運びたい、となれば可搬重量4kgではあまりにもギリギリですので安全を見て可搬重量5kgのロボットが必要、ということですね。

そうなると、こういう考えが浮かぶのではないでしょうか。「可搬重量がとても大きな、例えば1トンのロボットを用意すれば細かいことを考えずにいろんなものが運べるのでは」と。
一見それで良さそうに思いますが、世の中には可搬重量500gや1kgといったとても小さなロボットも存在する為、ただ単純に大は小を兼ねる、というわけではなさそうです。

まず、可搬重量が大きなロボットはロボット自体の大きさも大きくなる傾向にあります。ほんの指先サイズの小さなものを運ぶのに、2メートルも3メートルも高さのあるロボットを使うのはスペースがもったいないですよね。

ロボットが大きければそれを動かす電力も大きなものになります。必要以上の電力を使うのももったいない、SDGs的にもよろしくありません。
また、可搬重量が大きなロボットは価格も高額である傾向にあります。できるだけコストを下げたい、と考えると対象物に対してあまりにも大きなロボットを使うのはやはりもったいない、とも言えます。

上記のことから、ロボットの可搬重量は運びたいものに対して十分であることは必要ですが、必要以上に大きすぎても良くないことがわかりますね。適切な可搬重量のロボットを選定することが大切です。

また、ロボットの選定には可搬重量以外にも多くの項目について検討する必要があります。「どんなロボットを選べばよいのだろう?」という方は是非一度常盤産業へご相談ください。お客様それぞれの状況・条件にあわせて最適なご提案をいたします!

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