「キーエンス社、コグネックス社、オムロン社…。メーカーが多すぎて、結局どう選べばいいかわからない」
目視検査の自動化を検討しているなら、一度は抱いたことのある悩みではないでしょうか。
AI外観検査サービスを選ぶ際、精度、費用、導入難易度など判断要素が多すぎて、一社に決めきれない企業が多いのが現状です。
しかも高額投資になるため、失敗は避けたい。
自分で判断する自信がない。
そんな不安を抱えながら情報収集している方も少なくありません。
実は、メーカー選定で失敗しないためには、2つの選択肢があります。
1つ目は6つの判断基準を使って自分で選ぶ方法。
もう1つは選ぶことはしないで****複数メーカーを扱う商社に相談して、最適な組み合わせを提案してもらう方法です。
この記事では、500件以上の製造現場で自動化を支援してきた私たち常盤産業が、メーカー選定に必要な判断基準と、商社活用のメリットを体系的に解説します。
この記事でわかること
- メーカー選定の6つの判断基準
- 商社活用のメリット(「選ばなくていい」選択肢)
- 業界別の選定ポイント
- よくある失敗パターンと回避策
- 問い合わせ時の確認ポイント
最後までお読みいただければ、「自分で選ぶ」「商社に任せる」のどちらを選んでも、失敗しないメーカー選定ができるようになります。
この記事を書いた人
常盤産業株式会社担当者
愛知県名古屋市に本社を置く機械設備商社(知識商社)。
生産設備の自動化事業を核とし、500件以上の製造現場で課題解決を支援。特定のメーカーに縛られない中立な視点と、現場に寄り添う提案力に定評がある。
目視検査自動化のシステムでメーカー・SIer選定で重要な6つの判断基準
目視検査の自動化を進めるにあたり、メーカー・SIerを選ぶ際に重要な6つの判断基準を詳しく解説します。
これらの基準を押さえることで、自社に最適なメーカーを見極められます。
自社の検査要件を明確にする

メーカー選定の前に、まず自社の検査要件を明確にする必要があります。
要件定義が曖昧なままだと、導入後に「思っていたものと違う」というミスマッチが起こりやすくなります。
実際、ある食品メーカーでは、焼け不良の検出に特化しすぎたシステムを導入してしまい、他の欠陥を見逃す結果になったケースもあります。
導入検討の第一段階で、現在の検査工程を詳細に分析し、AIで解決したい課題を明確化することが成功への第一歩です。
明確にすべき5つのポイント
- 検査対象:何を検査するのか
- 検出したい不良種:どのような不良を検出したいのか
- 必要精度:どの程度の精度が必要か(例:不良流出率を0.1%未満に)
- 処理速度(タクト):どのくらいの速度で検査する必要があるか
- 予算:どの程度の予算を確保できるか
これらを数値目標として設定することで、適切なシステム選定と効果測定が可能になります。
例えば「検査工数を30%削減」といった具体的目標を立てることで、ベンダーも明確な提案ができるようになります。
要件整理には1~2ヶ月かけるべきとされていますが、この時間を取ってでも要件を固めることで、後戻りや認識違いを防げます。
検査精度と対応できる不良種類を確認する
自社の検査要求を満たせる精度と、検出したい不良の種類に対応できるかを確認します。
検査精度の評価ポイント
外観検査AIの技術力は、検査精度や運用効率に直結します。
評価すべきポイント
- 高精度なAIモデルを複数種類備えているか:検出型・分類型・ランク判定型など、ケースに応じた複数の判定モデルに対応しているか
- ディープラーニング活用による少数画像での高精度学習:少ないデータでも高精度な学習ができるか
- 現場環境への柔軟な対応力:PoCで精度が出ても、現場の撮像環境変化(照明変動や位置ずれなど)に対応できるか
特に重要なのは、重要な欠陥を見定め、欠陥のバリエーションや出現頻度を考慮することです。
事前に検査すべき不良モードを網羅しておかないと、正確な精度評価ができません。
業界別の精度目安
業界や検査内容によって要求される精度は異なります。
例えば、自動車部品業界では安全部品で99.9%以上の検出精度が要求されるケースもあります。
一方、食品業界では異物検出が最優先で、髪の毛や虫などの微細な異物を高精度で検出できることが求められます。
高い検査精度を維持できるか、必要な不良の種類をすべてカバーできるかを、メーカーに具体的に確認しましょう。
既存ラインとの統合性を評価する
既存の製造ラインやシステムにスムーズに統合できるかは、導入成功の重要な鍵です。
確認すべき統合ポイント
- 既存設備との接続可否:既存のカメラ・照明・コンベア等やAI用PCと接続できるか
- PLC連携:不良検出時にライン停止・排出などを行うため、PLCやデジタルIO機能が備わっているか
- 既存システムとのデータ連携:MESや生産管理システムとデータ連携できるか
- 後付け導入の可否:自社ラインへの後付け導入が可能か
インライン検査の場合、検査装置をラインのどこに置くか、サイクルタイムに合わせて処理できるかも統合上の鍵となります。
搬送設備との同期(コンベア連動や反転機構による両面検査など)が必要なケースも多いです。
高精度な検査には位置決め精度など装置側の要件も絡み、すべてのステップが最終精度に関わります。
統合性が低いと、せっかく精度の高いシステムでも現場で活かせなくなる恐れがあります。
選定時にはメーカーに対し「既存ラインへの後付け導入は可能か」「既存システムとデータ連携できるか」を確認し、必要に応じてカスタム開発の可否も尋ねることが大切です。
私たち常盤産業は、既存ラインへの後付け導入や複数メーカー製品の統合実績があり、生産ラインを止めずに導入できる提案が可能です。
カスタマイズ性と拡張性を見極める
自社の特殊要件に対応できる柔軟性も、重要な比較ポイントです。
カスタマイズが必要になるケース
自社の検査対象や不良判定基準に、そのまま適合する製品は稀です。
どの製品を導入しても、自社工程に適合させるには一部カスタマイズが必要になるケースがあります。
カスタマイズのポイントは以下の通りです。
- UI面:検査結果の表示方法(ライン現場のモニターやブザー連携など)を自社仕様にできるか
- システム面:画像収集方法の変更・制御指示の出力・既存システム連携などバックエンドの拡張性
- 学習モデル:将来的に製品モデルが増えた場合、新たな不良パターンを学習させ追加できるか
将来の拡張性も考慮
選定時には、将来的な仕様変更やライン拡大への対応も総合評価すべきです。
検査項目を増やせるか、製品バリエーションが増えた際に対応できるかといった拡張性は、長期的な投資効果に影響します。
自社に専門人材がいない場合はメーカー任せになる部分も多いため、必要なカスタマイズに柔軟に応じてくれるベンダーかどうか見極めましょう。
私たち常盤産業は、カタログにないものは新規開発してでも提供する対応力が強みです。
「世界にひとつだけの製品を創作」できる提案力で、お客様の特殊要件にも対応しています。
サポート体制の充実度を重視する
導入して終わりではなく、運用フェーズでいかに支援を受けられるかも成否を分けます。
確認すべきサポート内容
導入前から運用・保守まで、サポートが充実している会社を選ぶべきです。
具体的には以下を確認しましょう。
- 導入前のテスト支援:どこまで支援してくれるか
- 初期導入時のトレーニング:操作方法や調整方法の教育があるか
- 定期点検・メンテナンス:定期的なサービスがあるか
- トラブル時の対応:リモート対応可能か、何時間以内に来てもらえるか
- ソフトウェアアップデート:継続的な機能改善があるか
特にAIシステムは現場での検証ノウハウや継続支援が重要です。
環境変化や経年劣化で再学習や調整が必要になる場面がありますが、プログラミング不要で再学習や閾値調整ができるインターフェースが備わっていると、現場での運用がスムーズです。
サポート体制は長期的な安心感につながる
サポート体制が手薄だと、せっかく導入しても問題発生時に復旧できず放置という事態にもなりかねません。
サポートが手厚いベンダー選びは、長期的な安心感につながります。
私たち常盤産業は、導入からセットアップ、アフターフォローまで一貫対応できる体制を整えています。
500件以上の現場で培ったノウハウで、導入後も継続的にサポートします。
費用対効果とROIを計算する
最終的にはコストと得られる効果のバランスも欠かせません。
初期費用とランニングコストの内訳
AI外観検査システムの導入費用は、検査内容・規模・機材構成によって数十万円から数千万円と幅があります。
ほとんどのメーカーが個別見積もりになりますが、以下のコストを考慮する必要があります。
- 初期費用:カメラ・センサー・画像処理装置・制御システムなど
- 維持費:ライセンス更新料、保守費、運用段階のライセンス費用(数十万~数百万円/年)
- アップデート費用:システム更新やバージョンアップにかかる費用
導入検討時には、複数社から見積もりを取り、初期費用だけでなく維持費も含めて比較することが推奨されています。
ROI(投資回収期間)の計算方法
費用対効果を判断するには、投資額に対して削減できる人件費や不良損失低減額を試算する必要があります。
例えば検査員3人を置き換えるなら年あたり人件費がどれだけ削減できるか、不良流出減でクレームコストがどれだけ削減できるかを計算します。
その上でROI(投資回収期間)を算出し、自社基準に見合うか検討しましょう。
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回収期間の目安
製造業の設備投資ではROI5年以内を目標にするケースが多いです。
外観検査の場合、人件費削減効果で2~3年程度で回収できた事例もあります。
また、公的補助金(IT導入補助金・ものづくり補助金など)の活用も費用対効果を高める一手です。
自治体や国の補助金で対象となる場合もあるため、合わせて検討すると良いでしょう。
「選ばなくていい」選択肢とは?商社活用のメリット

メーカー選定に自信がない方、多すぎてもう選べないという方には、商社を活用して「自分で選ばない」選択肢があります。
商社の本質的価値は「複数メーカーから最適な組み合わせを提案できること」です。
選定の負担から解放され、自社に最適なシステムを構築できます。
商社が複数メーカーから最適な組み合わせを提案できる理由
商社とメーカーの違いを理解することで、商社活用のメリットが見えてきます。
商社とメーカーの違い
- メーカー:自社製品を売る(自社製品中心の提案になりがち)
- 商社:複数メーカーから選べる(中立的な立場で最適解を提案)
FA商社は、単一メーカーにとらわれず様々なメーカー製品を組み合わせ、課題に最適なソリューションを提供できるのが強みです。
商社が持つ独自の価値
AI検査で成果を出すには、デジタル(AI)・ハード(カメラ照明)・現場知見を一貫して持つことが重要ですが、それを兼ね備えたパートナーは少ないのが現状です。
商社系SIerはまさにそれら知見を社内外ネットワークで補完し、一括して提供できる存在です。
さらに、同業種での導入実績や業界特有の要件への対応力があり、様々な業界に関わってきた商社ならではの幅広いノウハウが活きます。
ユーザーにとっての最大のメリット
商社に相談する最大のメリットは、自分で一社ずつ比較検討する手間を省き、経験豊富なプロにベストミックスを考えてもらえる点です。
500件の実績から見た商社活用の成功事例
私たち常盤産業は、500件以上の導入支援実績を持つ知識商社です。
例えば、あるプロジェクトではカメラや照明はキーエンス製、AIソフトはスタートアップ製、ロボットは安川電機製といった複数メーカー品を統合した検査装置を納入しました。
単一メーカーの提案では実現できなかった最適な組み合わせを、1000社以上の仕入先ネットワークを活用して提供できるのが、私たちの強みです。
単一メーカーでは解決できない課題
外観検査システムは要素技術が多岐にわたるため、一社だけですべて網羅するのは困難です。
複数メーカーの組み合わせが必要な理由
外観検査システムには、カメラ・レンズ・照明などの光学機器、AI画像判定アルゴリズム、ロボットアームや排出機構、PLC制御など、多くの要素技術が必要です。
高精度な検査には位置決め精度など装置側の要件も絡み、すべてのステップが最終精度に関わります。
そのため、各分野のベストな製品を組み合わせることで、初めて最適なシステムが実現できます。
単一メーカーの限界
AIツールだけ入れてもうまくいかない例が多いのは、デジタル技術+ハードウェア+現場知見を一貫提供できる所が少ないからです。
単一メーカーの提案だと、既存の検査機では検出できない欠陥があっても、他社製品との組み合わせが提案されないことがあります。
しかし商社であれば、例えばカメラはメーカーA、AIソフトはメーカーB、ロボットはメーカーCというように、ベストな組み合わせを実現できます。
具体例:ハイブリッドシステムの構築
既存のルールベース検査機を大改造せずAI機能を後付け導入することも可能です。
複数ベンダーの技術をハイブリッドに用いる必要がある場合、商社経由ならそれがワンストップで実現できます。
私たち常盤産業は、マルチベンダー対応で柔軟性があり、グループ会社のエンジニアリング会社(トキワシステムテクノロジーズ)を駆使して、「世界に一つだけの製品」を創り出せる対応力があります。
商社が中立的な立場で最適なシステムを構築できる理由
商社は特定メーカーの販売代理ではあるものの、複数メーカー製品を扱うため立場は中立に近いです。
メーカー直接の課題
単一メーカーはどうしても自社製品で完結する方向に話が進みがちで、本当は他社の方が適している部位があっても提案されないことが起こりえます。
商社の中立性
商社は自社製品を持たない(または自社ブランド品はあっても押し売りしない)ので、純粋にユーザーの要件に合うか否かで提案が行われます。
私たち常盤産業の社内方針は「お客様に最適なものを粘り強く探す」「世界に一つだけの製品を創る」というものです。
この姿勢は中立性と課題解決優先の表れです。
費用対効果の最大化
ユーザーから見れば、商社に相談すれば自社内に専門部隊を持つのと同じ感覚で、各分野のベストな構成要素を集めてシステムを設計してもらえます。
商社は全体を調整する中でコスト配分を最適化できます。
必要以上に高性能な機器は選ばずコストダウンを図ったり、逆に将来に備えて拡張しやすい機器を提案することで長期的コスト低減を狙うなど、トータルでROIを最大化する提案をしてくれます。
ライン速度やカメラ配置など製造ライン知見とデジタル知見を一貫して備えていることが成果に直結します。
商社はまさにそれを体現する存在で、ユーザー企業の立場でプロジェクト全体を最適化してくれる中立的パートナーと言えます。
商社を活用すべきケースと直接メーカーが向いているケース
商社への依頼が特に有効なケースと、直接メーカーが向いているケースを整理します。
商社活用が向いているケース
以下に該当するなら、初めから商社系SIerに相談した方がスムーズです。
- 検査要件が複雑:一社の製品だけでは対応が難しそうな場合(多品種・多様な欠陥パターンを含む場合)
- 既存ラインの統合が必要:様々な機器があり統合が必要な場合(古い装置との接続や、新旧システム混在なども含む)
- 専門知見が乏しい:自社内に専門知見がなく、ベンダー間調整や技術的判断に不安がある場合
- 初めての自動化:初めて目視検査の自動化に取り組む場合
- 中立的な提案を求める:中立的な立場で最適解を提案してほしい場合
実際、先進的な大企業ほど複数ベンダーから提案を受け取り最適案を選定する傾向があります。
中小企業では技術的に自信がなく「どこに相談して良いか分からない」という声も多いです。
そのようなとき、商社であれば幅広い選択肢の中から「あなたの代わりに選ぶ」支援をしてくれるため心強い味方になります。
直接メーカーが向いているケース
一方、以下のような場合はメーカー直接が向いています。
- すでに使用したいメーカー・製品が決まっている場合
- 以前から特定メーカーの装置を使っておりノウハウが蓄積している場合
- 検査対象が単純で一種類の装置で十分対応可能な場合
- 自社に十分な技術力と選定能力がある場合
- 自社に高度な画像処理エンジニアがいて自前でカスタマイズできる場合
判断に迷ったら商社に相談を
判断に迷う・リスクを取りたくない場合は、商社に任せるという選択肢を積極的に検討すべきです。
これは決して丸投げという意味ではなく、ユーザーは要件を提示しつつ商社と二人三脚で最適解を導き出すイメージです。
その結果、導入後の満足度や効果も高まる傾向にあります(当社顧客でも「最初から相談して良かった」というフィードバックが多々あります)。
業界別の選定ポイント【500件の実績から】

500件の実績から見えた業界別の選定ポイントを詳しく解説します。
各業界の特殊要件や注意点を踏まえた選定指針を提供します。
自動車業界で高精度・高信頼性が必須な理由
自動車(特に車載部品)分野では、欠陥が人命に関わる可能性もあるため、外観検査における要求水準が非常に高いです。
塗装面の微細な傷検出やボルト締結状態の確認などにもAI検査が活用されています。
特にエアバッグ等の安全部品では、99.9%以上の検出精度が要求されます。
このような超高精度を安定して満たすには、人手検査では限界があり、AI+画像処理システムへの置き換えが急速に進んでいます。
選定時の重要なポイント
- 検査精度を最優先:微細な傷や欠陥も見逃さない性能が必要。高解像度カメラや高度なアルゴリズム(ディープラーニング)の採用実績を持つメーカーが有力候補
- リアルタイム処理能力:自動車工場はタクトタイム(ライン速度)が速いため、AIの画像判定を0.1~1秒程度で完了できる高速コンピュータが必要
- 将来の拡張性:自動車業界はモデルチェンジ頻度が高く製品バリエーションも多いため、新たな部品への対応や検査項目追加の柔軟さも見逃せない
医療機器業界で規制対応・トレーサビリティが重要な理由
医療機器や医薬品業界では、品質基準への遵守はもちろん、当局規制への適合と検査プロセスの完全な記録(トレーサビリティ)が求められます。
医療機器業界特有の規制要件
医薬品製造では、GMP規則の下で検査記録の保存や異常発生時の原因追跡が義務付けられています。
医薬品業界では錠剤の形状・色調検査や包装シール確認にAI検査システムが活用されており、規制対応のためのトレーサビリティ機能も充実しています。
トレーサビリティとは
検査結果をすべてデータベースに蓄積し、いつ・どの製品を検査しどのような判定を下したかを後から証明できる機能です。
医療機器でも、人工関節やカテーテルなどの外観検査にAIが使われ始めており、製品一つ一つにシリアル番号を振り検査画像と照合して保存するなどの要求があります。
選定時の重要なポイント
- 検査データ管理機能:ログ取得やレポート出力が可能か
- 特殊環境への対応:クリーンルームでの使用など(粉塵を嫌う環境でファンレスPCを使えるか等)
- 過検知と見逃しのバランス:医療分野は不良ゼロが理想であり許容範囲が極めて厳しいため、過検知(良品を誤って不良と判定すること)を極力減らしつつ見逃しゼロに近づけるバランスが重要
食品業界で衛生性・安全性を最優先する理由
食品・飲料業界では消費者への安全が最優先であり、外観検査でも主に異物混入やパッケージ不良の検出が重視されます。
食品業界特有の衛生・安全要件
AI外観検査の導入が特に進んでいるのが異物検査領域です。
従来人手では見逃しがちだった髪の毛・虫・微小なプラスチック片なども高精度に検出できる点が評価されています。
食品業界では、髪の毛や虫など微細な異物もAIが高精度で検出し、食品安全性の向上に大きく貢献しています。
選定時の重要なポイント
- 異物検出の実績:食品特有の課題として、製品の形状や色が自然由来でばらつきがあること、異物も千差万別であることが挙げられます。そのため検査アルゴリズムの汎用性(学習データにない異物でも見つけられるか)が重要
- 照明技術:異物を浮き立たせる光学系も考慮が必要。例えば白っぽい異物を白い背景で検出するのは難しいため、どのような光の当て方・カメラ角度で対応するかノウハウを持つベンダーが望ましい
- 衛生基準への対応:ステンレス筐体で拭き取り清掃可能な装置か、異物混入リスクの低い構造か、といったハード面の確認も抜かりなく行うべき
- コストパフォーマンス:食品は低マージン業界でもあるため、必要十分な性能を持ちつつコストパフォーマンスに優れる提案を選ぶことになります
私たち常盤産業は、食品工場向けの異物検査システム導入実績があり、衛生基準を満たす装置設計が可能です。
安全第一でありながら費用対効果の見極めもシビアな食品業界では、「異物検出能力」「衛生設計」「コストに見合う効果」を軸にサービスを選定すると良いでしょう。
電子部品業界で微細な欠陥検出が課題となる理由
電子部品や半導体業界では、検査対象が小さく欠陥も極めて微細であることが特徴です。
電子部品業界特有の検査要求
基板実装工場などでは人手検査には拡大鏡や顕微鏡が必要なレベルの検査をAIに置き換えており、微小欠陥の検出力と検査スピードの両立がポイントになります。
電子部品業界では、基板上の微細なハンダ不良や部品の極性間違いをAIが高精度に検出し、従来比で検査時間を大幅短縮した事例があります。
24時間連続稼働することで人手では不可能なスループットを実現し、生産性向上と人件費削減につなげています。
選定時の重要なポイント
- 高解像度の画像処理:CCD/CMOSカメラの画素数やレンズの分解能、微小な傷を識別できるAIモデルの有無を確認。半導体分野では0.1mm以下の欠陥検出も普通なので、該当分野の実績を持つベンダーが安心
- 安定性・再現性:極小不良は環境ノイズの影響も受けやすいため、温度変化や振動に強い装置か、画像処理のばらつきが小さいかを評価。画像調整機能の有無もチェックポイント
- 拡張性:将来的な実装変更(部品の小型化・高密度化)にも対応できる柔軟性。電子部品業界は技術進歩が早く、数年で検査基準が変わることもあります。その際ソフトウェアアップデートや追加学習で対応できると設備寿命が伸び投資効率が良くなります
私たち常盤産業は、電子部品業界での導入実績があり、微細検査に対応できる高解像度システムの提案が可能です。
「どれだけ小さい不良を見つけられるか、その精度を安定維持できるか」が選定の鍵となります。
メーカー選定でよくある失敗パターン

500件の実績から見えた失敗パターンとその原因を詳しく解説します。
読者が同じ失敗を避けられるよう、具体的なリスク回避策を提示します。
失敗パターン1:要件が曖昧なまま選定してしまう
十分な要件定義をせずに機器選定を始めてしまうと、導入後に「思っていたものと違う」事態に陥ります。
どんな失敗が起きるか
ある食品メーカーでは、検査システムを導入したものの「焼け不良しか検査できない」というケースがありました。
これは事前に検査したい欠陥種別や許容基準を詰めずに進めてしまい、システムが限られた不良モードしか検知できなかったためです。
他にも、現場の制約を詰めずに導入して後から「装置が設置できない」「ラインと合わない」といった問題が発生するケースもあります。
なぜ起きるのか
現状分析不足が原因です。
現在の検査工程を詳細に分析し、課題を数値目標化することが成功のカギですが、最初にこれを怠ると方向違いの製品を選んでしまい、手戻りコストが発生しかねません。
どう回避すべきか
要件の明確化が第一です。
導入プロジェクトの初期段階で必ず現状分析と要件定義を行いましょう。
検査対象・不良種別・必要精度・処理速度・設置環境・予算などを文書化し、社内とベンダー間で共通認識を持つようにします。
検査工程の調査と目標設定・システム要件整理に1~2ヶ月かけるべきとされています。
このように時間を取ってでも要件を固めることで、後戻りや認識違いを防げます。
また、要件定義書をもとに各ベンダーにPoC(概念実証)を依頼し、要求を満たせるか事前検証することも有効です。
失敗パターン2:初期コストだけで判断してしまう
見積額の安さだけに注目し、性能やサポートを度外視してしまう失敗です。
どんな失敗が起きるか
「とにかく予算内に収めたい」という思いから格安の提案に飛び付くと、いざ使ってみて精度不足・耐久性不足で結局使い物にならず、再投資という最悪の結果も起こりえます。
安価なシステムを選んだら精度不足で結局買い直した、安く導入したがメンテ費用が高くついた、といった事例があります。
なぜ起きるのか
外観検査導入において、精度とコストは常に天秤にかけられます。
価格にはアフターサービスや耐用年数に関わる部分も含まれるため、初期費用が安くても故障が頻発すればトータルコストは高くつきます。
どう回避すべきか
初期だけでなくライフサイクルコストで評価することです。
単なる初期価格ではなく、投資対効果(ROI)やランニングコストまで含めて比較検討します。
例えば5年運用すると仮定して、保守契約費や消耗品交換費、場合によってはシステム更新費まで見積もりましょう。
また、人件費削減効果や不良減少によるコストメリットも算出し、コストと効果のバランスを見ることが重要です。
複数ベンダーの見積仕様を照らし合わせ、「安いと思ったA社案はサポート別料金だった」「B社案は高いが検査漏れリスク低減で結果的にお得」など、総合判断することで失敗を避けられます。
さらに、複数社から見積もりを取得し比較検討することも重要です。
一社だけの提案では高いか安いか判断がつかないし、内容も各社で異なるため、総合的な価値を見極めるには複数比較が有効な防波堤となります。
失敗パターン3:単一メーカーに固執して柔軟性を失う
最初から「○○社のシステムで統一する」と決め打ちしてしまい、結果的に自社要件に合わない部分も無理やり押し通してしまう失敗です。
どんな失敗が起きるか
既存ラインが特殊な仕様なのに、メーカー標準機能では対応できず改造費が高騰といったケースがあります。
また、一社提供の場合どうしても盲点が出やすく、カメラ・照明などハード知見とAI等デジタル知見、両方を一貫して備える所は少ないのが現状です。
単一メーカーでは補えない部分が放置され、結果として「精度が出ない」「トラブル対応できない」事態に陥るリスクがあります。
「デモは良かったのに本番で再現できない」ケースもあります。
これは一社のデモ環境では理想条件だったが、現場条件への適応力がなかった可能性があります。
デモでうまくいったからと単独の装置を導入したら、現場条件では精度が出なかったという事例もあります。
なぜ起きるのか
メーカー側は自社製品を推す傾向があり、他社製品との組み合わせを提案しないことが多いためです。
どう回避すべきか
必要に応じて他社技術を組み合わせる余地を残しておくことが重要です。
商社などマルチベンダーの立場から提案を受けることで、この失敗はかなり防げます。
自社内のこだわり(例えば「全部国産メーカーで揃えたい」等)がある場合も、それが目的化しないよう注意が必要です。
失敗を避ける3つの対策
対策1:要件を明確化する
失敗パターン1への対策として、導入プロジェクトの初期段階で必ず現状分析と要件定義を行います。
検査対象・不良種別・必要精度・処理速度・設置環境・予算などを文書化し、社内とベンダー間で共通認識を持つようにします。
検査工程の調査と目標設定・システム要件整理に1~2ヶ月かけるべきとされています。
このように時間を取ってでも要件を固めることで、後戻りや認識違いを防げます。
また、要件定義書をもとに各ベンダーにPoC(概念実証)を依頼し、要求を満たせるか事前検証することも有効です。
対策2:トータルコストで評価する
単なる初期価格ではなく、投資対効果(ROI)やランニングコストまで含めて比較検討します。
例えば5年運用すると仮定して、保守契約費や消耗品交換費、場合によってはシステム更新費まで見積もりましょう。
また、人件費削減効果や不良減少によるコストメリットも算出し、コストと効果のバランスを見ることが重要です。
複数ベンダーの見積仕様を照らし合わせ、総合判断することで失敗を避けられます。
対策3:PoC(概念実証)で検証し段階導入する
いきなりフルスケール導入せず、小さく試してから広げる取り組み方です。
段階的な導入やスモールスタートが可能かを評価ポイントに挙げ、低コストで試行できる環境や技術支援の有無を重視すべきとされています。
具体的にはベンダー評価・PoC(概念実証)・効果検証のフェーズを設け、本契約前に精度や運用面の課題を洗い出します。
さらに、導入初期は従来検査と並行運用してAI判定の妥当性を確認することもリスク軽減策です。
このように段階を踏めば、「デモは良かったが本番NG」という失敗も防げるし、現場スタッフの習熟期間も確保できます。
段階導入には多少時間と手間がかかりますが、結果的に「想定外の問題に対処できず頓挫した」という最悪の事態を避ける保険になります。
弊社ではトキワシステムテクノロジーと連携したPoCを行うことで「思い描いている自動化」を試してみることが可能です。
問い合わせ時に確認すべき5つのポイント
メーカー・SIerに問い合わせる際に必ず確認すべき5つのポイントを詳しく解説します。
これらを確認することで、自社に最適な提案を引き出せます。
同じ業界・製品での導入実績
検討中のベンダーが自社と同じ業界や類似製品で実績を持っているかは、必ず確認すべきポイントです。
なぜ実績が重要なのか
業界や製品ごとに判定難易度が異なるため、同業種での導入実績や業界特有の要件への対応力が重要です。
実績があればその業界独自の品質基準(例えば自動車業界の厳しい基準や、食品業界の衛生規則など)を理解している証拠になります。
何を確認すべきか
問い合わせでは「○○業界での導入事例はありますか?どんな製品への適用実績がありますか?」と具体的に尋ねてみてください。
可能なら事例の概要や達成した精度も教えてもらいましょう。
実績ゼロでも技術的に問題ないケースもありますが、その場合は「なぜ対応可能と言えるのか」を根拠付きで説明してもらうことが大切です。
実績は信頼のバロメータとなります。
検査内容に合わせたカスタマイズ対応
自社の検査対象や不良判定基準に、そのまま適合する製品は稀です。
なぜカスタマイズ対応が重要なのか
多少のカスタマイズや調整は必要になるケースが多いため、どこまで柔軟に対応してもらえるかを確認しましょう。
製品の検査工程に適合させるには一部カスタマイズが必要なケースもあり、どの部分でカスタマイズ可能か確認すべきです。
何を確認すべきか
問い合わせ時には例えば「当社では○○という特殊な検査基準がありますが対応可能でしょうか?」「UIや報告書のフォーマットを社内基準に合わせられますか?」など具体的に聞くのが良いでしょう。
カスタム対応が難しいと言われたら代替案があるか(検査プロセスを変える等)も議論します。
ベンダー側のエンジニアリング体制(社内に開発者がいるか、外注になるのか)もこの質問で見えてきます。
自社ニーズに対し前向きに検討してくれる姿勢かどうかも重要な判断材料です。
私たち常盤産業は、カスタマイズ対応が可能で、柔軟な提案ができます。
導入後のサポート体制
購入前には見落としがちですが、アフターサポートは長く使う上で極めて重要です。
なぜサポート体制が重要なのか
導入から運用・保守までサポートが充実している会社を選ぶべきです。
稼働後にどのような支援が受けられるか事前に確認すべきとされています。
何を確認すべきか
具体的には、問い合わせ時には以下を質問すると良いでしょう。
- 「初期導入時のトレーニングはありますか?」
- 「故障やトラブル時の対応はどのように行われますか(リモート対応可か、何時間以内に来てもらえるか等)?」
- 「定期メンテナンスやソフトウェアアップデートのサービスはありますか?」
- 「保証期間と延長保守契約の内容は?」
AIシステムは導入後のチューニングが続くものなので、フォローアップがしっかりしているベンダーを選ぶべきです。
サポート体制が手薄だと、せっかく導入しても問題発生時に復旧できず放置ということにもなりかねません。
この確認を通じて、相手企業の顧客対応ポリシーや規模感(サポート拠点・人数)も見えてきます。
私たち常盤産業は、導入後のサポート体制が充実しており、物流センター兼サービス拠点で迅速なメンテナンス対応が可能です。
既存ラインへの後付け導入の可否
現在稼働中の生産ラインに新たな検査システムを組み込む場合、その適合性を事前に確認する必要があります。
なぜ後付け導入の可否が重要なのか
既存ラインやシステムと統合できるかどうかを確認することで、スムーズな導入が可能になります。
「今使っているコンベアやロボットと連動できますか?」「PLCと通信して不良品排出を制御できますか?」といった具体事項をチェックすべきです。
何を確認すべきか
問い合わせ時には自社ラインの制御方式(PLCメーカーや通信プロトコル)、スペースやタクトタイムなどの制約も伝えた上で、「後付け導入した事例はありますか? 問題になりやすい点は?」と質問するのが有効です。
場合によっては、ライン改造が必要な範囲や停止期間の見積もりも聞いておきます。
生産を止めずに導入できるか(例えば休日に設置するとか、並行ラインでテストするとか)も重要ポイントです。
ベンダーによっては既存設備の簡単な診断サービスを提供してくれることもあるので、提案してもらえるか確認しましょう。
導入費用と期間の目安
現実的な話として、どれくらいの費用と時間がかかるのかは必ず質問しましょう。
なぜ費用と期間の確認が重要なのか
多くのメーカーは個別見積もりですが、数十万円から数千万円と金額に幅があります。
何を確認すべきか
問い合わせ時には自社の検査対象や量を伝え、「この規模だとざっとどのレンジになりますか?」と聞けば大まかな予算感を教えてくれるはずです。
同時に、ランニングコスト(月額費用、消耗品や電気代の概算)も尋ねます。
また、リードタイム(導入までの期間)も確認必須です。
本格展開まで最短でも半年~1年程度かかる例が示されています。
AI外観検査システムは画像データ収集・学習期間も必要なため、一般の装置より時間がかかります。
ベンダーに「要件定義から稼働開始まで通常どのくらい?」と質問し、社内計画に組み込めるか検討しましょう。
特に設備予算の関係で年度内導入など制約がある場合、早めにスケジュール感をすり合わせておくことが大切です。
費用と期間の話は複数社で聞いて比較すると相場観が掴めます。
6つの基準と商社活用で失敗しないメーカー選定を
この記事では、目視検査自動化のメーカー・SIer選定で失敗しないための6つの判断基準と、商社活用のメリットを解説してきました。
検査要件の明確化から費用対効果まで、選定の軸を押さえることが重要です。
一方で「自分で選ぶ自信がない」という方には、複数メーカーを扱う商社に相談するという選択肢もあります。
商社なら中立的な立場で、複数メーカーから最適な組み合わせを提案でき、選定の負担から解放されます。
重要なポイント
- 自社の検査要件を明確にする
- 検査精度と対応できる不良種類を確認する
- 既存ラインとの統合性を評価する
- カスタマイズ性と拡張性を検討する
- サポート体制の充実度を重視する
- 費用対効果とROIで総合判断する
私たち常盤産業は、500件以上の製造現場で自動化を支援してきた知識商社です。
マルチベンダー提案が可能で、中立的な立場から、お客様に最適なシステムをご提案できます。
1000社以上の仕入先ネットワークを活用し、「世界に一つだけの製品」を創り出せる対応力があります。
目視検査の自動化でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
お客様の課題に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。